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成長期のサッカー選手の身体の変化 指導者と保護者が知っておきたいPHV

R7.6.9アイキャッチ③ 指導者として

ジュニアや中学生年代で活躍するサッカー選手たち。

彼らの成長の裏側には、“ある波”が存在します。

それが「PHV(ピークハイトベロシティ)」──身長が急激に伸びる時期のことです。

このPHVのタイミングを見誤ると、パフォーマンスが低下したり、けがのリスクが高まったりと、選手の可能性を妨げる要因になりかねません。

逆に、この時期を正しく理解し、適切に対応することができれば、選手のポテンシャルは大きく花開きます。

この記事では、PHVの意味や見分け方、JFAの予測ツールの活用法、そして指導者・保護者にできる対応までを、やさしくわかりやすく解説していきます。

サッカーに関わるすべての人に読んでいただきたい、育成年代の「成長」と「サポート」のヒントを、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

サッカー①

Contents

サッカー選手の育成年代における「PHV」とは何か?

PHV(ピークハイトベロシティ)の意味を簡単に解説

PHV(ピークハイトベロシティ)とは、日本語で「身長の伸びが最も速くなる時期」のことを指します。

特に育成年代の子どもたちにとっては、体の成長が急激に進むこの時期が運動能力やけがのリスク、心身のバランスに大きな影響を与えるため、サッカーのような競技スポーツでは非常に重要な概念です。

成長期に身長が一気に伸びると、骨の長さが急に変わるのに対し、筋肉や腱、神経などの発達はそれに追いつかず、一時的に体の使い方がうまくいかなくなったり、けがをしやすくなったりすることがあります。

これがいわゆる「思春期スパート」と呼ばれる時期で、PHVはその真っ只中に当たります。

男子ではだいたい12〜15歳、女子では10〜13歳のあたりでPHVを迎えることが多いですが、もちろん個人差があります。

特にサッカーでは、この時期にパフォーマンスが急に落ちたり、キックフォームが崩れたりすることが見られることもありますが、それは「成長の証」としてむしろ自然な現象です。

つまり、PHVは「危険な時期」ではなく、「未来の可能性が伸びる時期」と捉えることが大切です。

この時期をうまく乗り越えることで、選手としての成長スピードもぐっと上がる可能性があります。

なぜPHVを知ることが重要なのか

PHVを知ることの重要性は、成長に合わせた適切なアプローチができることにあります。

育成年代の選手に一律のトレーニングをしてしまうと、まだ体の準備ができていない子どもにとっては負担が大きく、けがのリスクが高まってしまいます。

一方で、すでに成長スパートを終えた選手に対しては、強度の高いトレーニングが必要になります。

たとえばPHV前は、基本的な運動能力やコーディネーション能力(体を自由自在に動かす力)を高めることにフォーカスすべきです。

そしてPHV期には無理な筋トレや激しい対人トレーニングは避け、体の変化に合わせた「調整型」のトレーニングを行うことが理想的です。

また、PHVを知ることで、子どものパフォーマンスの一時的な低下や不安定さを「成長の一環」として受け止めることができ、保護者や指導者の過度なプレッシャーや誤解を減らすことにもつながります。

そのためにも、PHVをただの知識としてではなく、日々の指導や生活に活かす意識が大切です。

PHVと成長痛・けがの関係性

PHVの時期は、身長が急激に伸びるだけでなく、骨や筋肉、関節にかかる負担も一気に増えます。

特にサッカーのようにジャンプ・着地・方向転換などが頻繁に行われるスポーツでは、この時期に成長痛や過度な負荷によるけがが多く見られます。

代表的なものには、「オスグッド病(膝の痛み)」「シーバー病(かかとの痛み)」などがあります。

これらは成長期の骨が柔らかく、筋肉の引っ張りにより炎症が起きやすいことが原因です。

いずれもPHV期に集中して発症する傾向があるため、日々の観察とケアが必要です。

けがを防ぐためには、ウォーミングアップやクールダウンを徹底すること、痛みがある時は無理をしないことが基本です。

また、保護者や指導者が「痛みを我慢するのが根性」といった古い考えにとらわれないことも大切です。

子どもが「なんだか最近、よく痛みを訴えるようになったな…」と感じたら、それは成長が加速しているサインかもしれません。

すぐに休ませるのではなく、適切な医療機関で評価を受けたり、負担を軽くしたりすることで、長期的な育成にもつながっていきます。

PHV期の身長の変化とは?具体的な目安

PHV期に入ると、身長が短期間で劇的に伸びます。

個人差はありますが、1年間で8〜10cm以上伸びることも珍しくありません。

ある日突然、ズボンが短く感じたり、靴のサイズが合わなくなったりするような変化が出るのがこの時期です。

男子のPHVは平均13〜14歳ごろに起きると言われており、女子は少し早く、平均11〜12歳が多いとされています。

これはあくまで「平均」であり、早熟タイプや晩熟タイプによって大きく前後するため、一人ひとりをしっかり見ていくことが大切です。

日常的に身長を記録しておくことで、「今月は1cmしか伸びなかったけど、先月は3cmも伸びていた」といった微細な変化を把握することができます。

こうした情報は、けがのリスク管理やトレーニング強度の判断にもつながります。

また、身長の変化に伴って「バランス感覚が悪くなった」「ボールタッチが安定しない」などの現象が見られることもありますが、それもまたPHVによる一時的な現象として受け止めましょう。

日本サッカー協会のPHV予測ツールの活用法

現在、日本サッカー協会(JFA)では、PHVの予測に役立つ「成長予測ツール」を提供しています。

このツールは公式サイト上で誰でも無料で使えるもので、「身長」「体重」「座高」「生年月日(西暦)」を入力するだけで、子どもがいつPHVを迎えるかを予測することができます。

この予測ツールを活用することで、「うちの子はあと半年後にPHVが来るかもしれない」といった予測が立てられ、トレーニング内容や生活習慣の調整に大いに役立ちます。

たとえば、PHV期が近いとわかったら無理な負荷のトレーニングは避け、柔軟性や基本動作の確認、メンタルケアに重点を置いた指導ができます。

逆に、すでにPHVを終えている子どもであれば、少しずつ筋力アップや持久力向上を意識したメニューを組んでいくことが可能です。

このように、成長を「予測」することは、才能を「育てる」第一歩になります。科学的なツールを活用し、感覚だけに頼らない指導・サポートが求められる時代です。

日本サッカー協会ウェブサイト「育成年代向け成長のモニタリング」はこちら
(注)この成熟度の計算式は男子のデータをもとに作成されており、女子のデータで作成された成熟度の計算式はありません。
女子サッカー①

成長期のパフォーマンス変化とPHVの関係

筋力トレーニングとPHVの関係性

PHVの時期は「筋トレをしていいのか?」「しないほうがいいのか?」と悩む指導者や保護者も多いですが、答えは「やり方次第で効果的に取り入れることができる」です。

ただし、この時期の筋力トレーニングは、無理な負荷をかけたり、回数を多くすればよいというものではありません。

まず理解すべきは、PHV期は骨の成長が筋肉よりも速く進むため、筋肉や腱が骨の長さについていけず、体の柔軟性が一時的に低下する時期です。

ですから、通常の大人向けの筋トレをそのまま導入すると、筋肉の引っ張りによって関節や骨に過度な負担がかかり、けがの原因になりやすくなります。

この時期のトレーニングは、「筋力をつける」よりも「正しい動きの型を身につける」「体幹を安定させる」「柔軟性を保つ」ことを重視した内容にすべきです。

たとえば、体幹トレーニング(プランクやバランスボールなど)、自重トレーニング(スクワットやランジなど)、関節可動域を広げるストレッチなどが効果的です。

また、PHV期の選手は一時的に動作がぎこちなくなったり、自分の身体の感覚が狂ったように感じることがあります。

この時期は「うまく動けない自分」に自信をなくすこともあるため、指導者や保護者は「今はそういう時期だよ」「体が成長している証拠だよ」と声をかけてあげることが非常に大切です。

筋トレをやめる必要はありませんが、「目的」と「方法」を間違えないことが重要です。

将来のための基礎づくりと考え、成長中の身体に合ったトレーニングを選びましょう。

コーディネーション能力の波を理解しよう

PHV期には、子どもの運動能力に一時的な波が現れます。

特に影響を受けやすいのが「コーディネーション能力」と呼ばれる、体を思い通りに動かす力です。

この能力は、バランス感覚や反応速度、リズム感など、サッカーで必要不可欠な「動きの質」に関わる部分です。

急激に身長が伸びることで重心が変わり、これまで自然にできていた動作が突然ぎこちなくなることがあります。

たとえば、トラップやターンの動きがずれたり、パスが急にズレるようになったりと、本人も「なんでできないんだろう」と悩みがちです。

しかし、これは成長によって体の構造が変わる「一時的な誤差」であり、焦って矯正しようとすると、かえって悪循環になります。

重要なのは、「元に戻す」のではなく、「新しい体での動かし方を再学習する」という考え方です。

そのためには、楽しみながら体を動かす遊びや、複雑な動きを含むトレーニング(ラダーやミニゲーム、変則パス練習など)を取り入れ、脳と体のつながりを再構築することが有効です。

また、この時期は失敗して当然と捉え、選手を責めずにチャレンジを応援する雰囲気づくりが重要です。

成長によってコーディネーション能力が一時的に低下するのは自然な現象。

ここを乗り越えることで、より高い次元の動きができるようになります。

PHV期のトレーニングで注意すること

PHV期は、「トレーニングの質と量のバランス」が非常に重要になります。

この時期に無理をすると、けがや燃え尽き、長期離脱の原因となり、将来的な選手寿命にまで影響する可能性があります。

以下に、PHV期に特に注意したいポイントをまとめます。

  1. 疲労の蓄積に敏感になること
     成長期は、ただでさえ体に大きな負荷がかかっている状態。練習後にぐったりしていたり、翌日もだるさが残っていたりするようであれば、強度や時間の見直しが必要です。

  2. プレーの変化に過敏にならないこと
     動きが不安定になっても、成長の影響であることを理解し、「一時的なもの」として見守る姿勢が大切です。

  3. 柔軟性の低下に対応する
     身長が伸びることで筋肉が張りやすくなります。トレーニング前後のストレッチやリカバリーの時間を確保し、柔軟性の維持に努めましょう。

  4. 精神面のサポート
     思うように動けない自分に対してストレスを感じる子どもも多いため、ポジティブな声かけや、結果ではなく努力を評価する姿勢が求められます。

  5. 個別対応を意識する
     同じ年齢でもPHVの時期は異なるため、チーム全体に同じ練習を課すのではなく、それぞれの発育に合わせたアプローチが必要です。

PHV期は「丁寧な対応」がカギ。

焦らず、確実に乗り越えていけるよう、子どもを支えていきましょう。

サッカー練習②

サッカー指導者がPHVを指導に活かす方法

PHVのタイミングをどう把握するか?

指導者にとって、選手一人ひとりの成長段階を正しく把握することは、効果的な育成のための第一歩です。

特にPHV(身長の成長が最も加速する時期)のタイミングをつかむことは、適切なトレーニング内容や負荷を見極めるうえで欠かせません。

そこで活用したいのが、日本サッカー協会(JFA)の「成長予測ツール」です。

これは、選手の身長・体重・座高・生年月日を入力するだけで、現在の成長段階と今後のPHV予測を簡単にチェックできる無料のオンラインツールです。

クラブチームやスクール単位でこれを導入すれば、全選手の成長状況を見える化することができます。

また、日々の観察も大切です。

たとえば、「最近急に靴のサイズが合わなくなった」「動きがぎこちなくなった」「練習後によく疲れている」といった兆候はPHVが近いサインかもしれません。

定期的に身長を測ることもおすすめです。

毎月1回でもよいので、記録を取り、数ヶ月単位で見比べると変化が分かりやすくなります。

指導者自身が「成長段階を意識した視点」を持つことが、未来のトップ選手を育てるための鍵になります。

成長に合わせたトレーニングの工夫

PHVの時期は、通常のトレーニングメニューをそのまま適用するのではなく、成長のステージに合わせて調整することが大切です。

たとえば、以下のようなアプローチが効果的です。

  • PHV前(小学校高学年〜中学初期)
     運動神経の発達が著しいこの時期は、スピードやリズム、バランス、反応など「コーディネーション能力」を高める多様な動きのトレーニングを重視します。鬼ごっこ、ラダー、ボールタッチの変化系など、楽しく体を動かす中で基礎を育てましょう。

  • PHV中(中学1〜2年ごろ)
     身長の急伸で体のバランスが崩れがち。強度の高いトレーニングよりも、正しいフォームの確認、体幹の安定性アップ、柔軟性維持を目的とした軽負荷メニューがおすすめです。

  • PHV後(中学3年〜高校以降)
     筋力や持久力を徐々に高めていく時期。個々の成長に応じたウエイトトレーニングの導入や、試合での体のぶつかり合いに耐える準備も意識していきます。

これらのアプローチを選手ごとに「カスタマイズ」できる指導者こそが、信頼される存在になっていきます。

チーム全体にPHV教育をどう浸透させるか

PHVの概念は、指導者が知っているだけでは意味がありません。

選手本人や保護者も含めた「チーム全体」が理解していることで、初めて効果を発揮します。

では、どうすればPHVの考え方を現場に浸透させられるのでしょうか?

まずは、定期的に「育成勉強会」や「保護者説明会」を開催し、PHVの基本的な知識や、成長期に見られる身体変化、けがのリスクなどを共有しましょう。

日本サッカー協会が公開しているPDF資料も活用できます。

次に、日々のトレーニングの中で「なぜこのメニューをやっているのか」「この時期は何を大切にしているのか」を選手にしっかり説明しましょう。

選手が納得して取り組むことで、より意識が高まり、トレーニングの質も向上します。

また、保護者には、「最近家でどんな様子ですか?」「身長伸びてきましたか?」など、コミュニケーションを通じて家庭内での変化も把握するよう心がけましょう。

PHV教育は、チームの文化として根付かせていくもの。小さな積み重ねが、強くてしなやかなチームづくりにつながります。

長期的育成プランにPHVを組み込む

サッカーの育成において、短期的な結果よりも長期的な成長を見据えることが最も重要です。

特にPHVのような「成長の節目」を育成プランに組み込むことで、無理なく・無駄なく・効果的なトレーニング設計が可能になります。

たとえば、1年間の育成計画の中に、「成長期に配慮した期間(リフレッシュ・テクニック強化)」「成長後に負荷を高める期間(フィジカルアップ・対人強化)」といったサイクルを意識的に入れ込むことが効果的です。

また、選手個々のPHV予測をもとに、「この選手は来年の春ごろに成長スパートが来そうだから、今のうちに動きの型を身につけさせておこう」「この選手はすでにPHVを過ぎているから、そろそろ筋力アップを意識してみよう」といった対応が可能になります。

成長を理解することは、未来のゴールから逆算すること。

結果として「早熟型」にとらわれない、真に実力を伸ばす選手育成ができるようになります。

個別アプローチの重要性

最後に、最も大切なのが「個を見る」視点です。

同じ学年、同じチームでも、成長スピードや身体の状態は選手ごとに大きく異なります。

したがって、一律の練習メニューや評価では対応しきれません。

選手それぞれのPHVの時期や体調を把握し、「いま彼に必要なのは何か?」を見極めたアプローチが求められます。

たとえば、急に疲れやすくなった選手にはトレーニング量を抑える、動きが安定しない選手には補助的なバランス練習を入れるなど、小さな調整が大きな差になります。

また、心理的なサポートも欠かせません。

成長期には「前はもっとできたのに…」と落ち込む選手もいます。そうしたときに、個別に話を聞き、前向きなフィードバックを与えることで、選手のやる気や自信を支えることができます。

一人ひとりを大切にする姿勢こそが、選手の才能を最大限に引き出す鍵です。

女子サッカー②

保護者が理解すべきPHVの影響とサポート法

子どもの体の変化をどう見守るか

子どもが成長していく過程では、体の変化が急激に起こる時期があります。

その代表的な時期がPHV(ピークハイトベロシティ)です。

この時期は、身長が急に伸びたり、体のバランスが取りにくくなったりするため、保護者の目から見ても「何かおかしいな」と感じることがあるかもしれません。

例えば、急に姿勢が悪くなった、走るフォームがぎこちない、転びやすくなった、よく足や膝が痛いと言うようになった──それはすべて「成長のサイン」である可能性があります。

ここで大切なのは、変化を「異常」ととらえるのではなく、「成長過程の一部」として見守ることです。

また、子ども自身も「なんで急にプレーがうまくいかないんだろう」と不安になることがあります。

そうした時、保護者が「成長期だからだよ、体ががんばって大きくなろうとしてるんだよ」と言葉をかけてあげるだけで、子どもは安心し、自分を責める気持ちから解放されます。

定期的に身長や体重を記録し、成長のグラフを一緒に見るのも良い方法です。

子ども自身が「いま成長してるんだ!」と実感できれば、少しうまくいかないこともポジティブに受け入れる力になります。

親の役割は、「焦らず、責めず、安心させる」こと。これが、成長期のサポートで何よりも重要です。

家庭でできるPHV期のケアとは

PHV期の子どもは、成長のスピードに体がついていけず、知らないうちに疲労がたまりやすくなっています。

そんな時期だからこそ、家庭でのちょっとしたケアが、けがの予防やパフォーマンス維持に大きく役立ちます。

まず大切なのが、「休養と睡眠」です。

身長の伸びや筋肉の修復は、主に睡眠中に行われます。夜更かしを避け、できるだけ決まった時間に寝るリズムをつくることが理想です。

特に中学生は8~10時間の睡眠が推奨されています。

次に、「お風呂の入り方」です。

練習後はシャワーだけで済ませがちですが、疲労回復や筋肉の緊張をほぐすためには、湯船にゆっくりつかるのが効果的です。

ぬるめのお湯で15分程度入浴することで、血流が良くなり、リラックス効果も得られます。

さらに、「ストレッチの習慣化」もポイントです。

成長期は筋肉が張りやすく、柔軟性が低下しやすい時期でもあります。

寝る前やお風呂上がりに簡単なストレッチを親子で一緒にすることで、けがの予防にもつながります。

これらは特別な器具も費用もいらない、日常でできるシンプルなケアです。

「うちでもできることからやってみよう」と思えたら、それだけで十分です。

食事や睡眠のサポートが成長を助ける

PHV期は体が急成長するため、普段より多くのエネルギーと栄養が必要になります。

食事の内容はもちろん、食べるタイミングや量にも気を配ることが大切です。

まず、食事の基本は「主食・主菜・副菜・乳製品・果物」の5つをそろえること。

成長期の子どもには、エネルギー源となるご飯やパン、筋肉を作るたんぱく質(肉・魚・豆類)、骨を強くするカルシウム(牛乳やヨーグルト)をバランスよく摂らせたいですね。

特にサッカーなどの運動量が多い子どもは、1日3食だけでは足りないこともあります。

間食にバナナやおにぎり、チーズなど、栄養価が高くて消化の良いものをうまく取り入れましょう。

スポーツドリンクやゼリー飲料も、練習後の栄養補給には便利です。

睡眠については、成長ホルモンの分泌が活発になる22時〜2時を「ゴールデンタイム」と呼びます。

この時間帯にしっかり寝ていることが、身長や筋肉の発達に大きく影響します。

ゲームやスマホの時間を減らし、寝る前は心を落ち着けるような環境づくりが大切です。

体の成長を支えるには、「食べる・寝る・動く」のバランスが不可欠。

親がしっかりと見守ってあげることで、子どもの潜在能力はぐんと広がっていきます。

急激な身長変化によるメンタル面のケア

成長期の子どもは、体だけでなく心も大きく揺れ動く時期です。

特にPHVの時期には、思い通りに体が動かないことや、けがが増えることで、自信をなくしたり、モチベーションが下がったりすることも少なくありません。

「前はもっと速く走れたのに」「パスが思った通りに出ない」といった変化に直面すると、子どもは不安や苛立ちを感じやすくなります。

その気持ちに寄り添い、まずは「その気持ち、わかるよ」と共感してあげることが、保護者にできる大切なメンタルケアです。

また、結果やパフォーマンスだけに注目するのではなく、日々の努力や工夫を認める姿勢が、子どもにとっては大きな安心感につながります。

「よく頑張ってるね」「成長してる証拠だよ」といった声かけを心がけましょう。

さらに、成長期特有の「見た目の変化」──急に背が伸びて服が合わない、手足が長くなってバランスがとりにくい──ことにも子どもは敏感です。

こうした身体的な変化に対しても、「かっこよくなってきたね」「すごく大人っぽくなったね」とポジティブに捉えてあげると、自己肯定感が高まります。

メンタルの安定は、スポーツの継続や上達に直結します。

思春期を迎える子どもたちにとって、保護者の理解と温かいまなざしは、何よりの支えになります。

保護者と指導者の連携のコツ

PHV期のサポートは、保護者と指導者が連携してこそ最大の効果を発揮します。

お互いに情報を共有し、子どもの体と心の状態を的確に把握することが、成長期のリスクを減らし、適切な対応につながります。

まずは、日常のちょっとした変化を伝え合いましょう。

たとえば、「最近疲れやすそうです」「膝が痛いと言っています」「夜の寝つきが悪くなったようです」といった家庭での様子は、指導者にとって貴重な情報です。

一方で、指導者からも「最近パフォーマンスが安定しません」「走り方が変わったようです」といったグラウンドでの様子を保護者に伝えることで、双方の視点から子どもを理解することができます。

連絡手段としては、LINEグループや保護者会を活用するのも有効です。

ただし、連絡が一方通行にならないよう、定期的なフィードバックや相談の時間を設けることが望ましいでしょう。

大切なのは、「子どもを中心としたチーム」であるという意識。

保護者と指導者が同じ目標を持って協力し合うことで、子どもは安心して自分の成長に集中できる環境を得ることができます。

サッカー試合①

PHVを見越した長期的な選手育成のヒント

フィジカルだけでない「人間的成長」への視点

PHVを考える際、どうしてもフィジカル(身体的)な成長に目がいきがちですが、育成年代で本当に大切なのは「人間的な成長」も並行して育むことです。

サッカーはチームスポーツであり、協調性、責任感、自己管理能力など、人間性がそのままプレーにも影響します。

PHV期は思春期とも重なり、自我が芽生え、心の不安定さや親離れ・指導者への反発といった行動が見られることもあります。

そうした時期に、単に「練習しろ」「結果を出せ」とプレッシャーをかけるだけでは逆効果です。

選手にとって必要なのは、「自分の体と心を知る力」「他者と協力する力」「苦しい時期に耐える力」です。

PHVのような成長の過程を自分自身で受け入れ、前向きにとらえるためには、自分を客観的に見つめる力が必要です。

だからこそ、指導現場でも技術やフィジカルだけでなく、選手一人ひとりの「心の育成」に取り組むべきです。

日記を書く習慣をつけたり、チーム内でミーティングを行ったり、仲間同士で感謝を伝える時間をつくったり──そうした日常の小さな積み重ねが、選手の内面を成長させ、プレーの質にもつながっていきます。

育成とは、サッカー選手を育てるだけでなく、1人の「人間」を育てるということ。

PHVのような時期を乗り越える力は、社会に出た後も大きな財産になります。

技術より土台!成長期の育成における優先順位

育成年代の選手を見ると、「ドリブルがうまい」「キック力がある」など、目に見える技術に目が行きがちですが、PHV期には「見えない土台作り」がもっとも重要です。

ここでいう土台とは、体の使い方、ケガをしない動き、そして自分の体を知る感覚です。

たとえば、まだ骨が柔らかく、筋肉が未熟なPHV期の選手に対して、高強度のスプリントや連続ジャンプ、過度なシュート練習をさせ続けると、オスグッドやシーバー病といった成長障害を引き起こすリスクが高まります。

逆に、体幹の安定や正しいステップの習得、柔軟性の向上といったトレーニングに時間をかけることで、成長後に本格的な技術練習をしたときに、大きく伸びる「準備」ができます。

一見遠回りに見えるかもしれませんが、基礎の徹底こそが将来の差を生みます。

高校生やプロになったときに差が出るのは、この「土台をどれだけ丁寧に積み上げてきたか」です。

今は結果よりも、体を大切に使うこと、そして「上手くなる土台」を築くことを最優先にしましょう。

早生まれ・遅生まれ問題とPHVの関係

育成年代のサッカー界では、「早生まれ・遅生まれ問題」がたびたび議論になります。

学年単位で区切られる日本の育成環境では、同じチームでも1月生まれと12月生まれでほぼ1年の発育差があり、それがプレーに大きな影響を与えるからです。

この違いが顕著に出るのがPHV期です。

たとえば、4月生まれの子は中学1年でPHVに入っていても、翌年の2月生まれの子はまだ身体が小さいままということもあります。

その結果、早生まれの子が「フィジカルで優位」とされ、試合で多く起用されがちです。

しかし、これは一時的な現象に過ぎず、発育が遅れている子どもが「劣っている」とは限りません。

むしろ、遅れて成長した選手は、PHV後に急激に伸びることも多く、メンタル面でも粘り強くなる傾向があります。

指導者はこの点をよく理解し、「いま大きいから上手」「いま小さいからダメ」といった短絡的な評価を避け、成長曲線の中で選手を見守る視点を持つべきです。

また、保護者も「うちの子は小さいから…」と焦る必要はありません。

子どもの発育ペースに合わせて、焦らずじっくりと育成することが、最終的な大きな成果につながります。

身体変化を受け入れる選手マインドの育て方

PHVの時期は、急激に変化する自分の身体に対して、選手自身が戸惑いを感じることが多くなります。

「前はもっと動けたのに」「パスが届かない」「体がついてこない」といった違和感は、本人にとっては非常に大きなストレスです。

こうした時期にこそ大切なのが、自分の体を受け入れ、変化を前向きにとらえる「選手マインド」を育てることです。

ここでは、コーチや保護者の声かけが非常に重要になります。

「今は調整の時期」「変化してるからうまくいかないだけで、絶対にまた良くなるよ」といった前向きな言葉がけが、選手の不安を軽減します。

また、日誌や振り返りシートを活用して「今日はどこが良くて、どこが難しかったか」を言語化させる習慣も、自己理解の助けになります。

そして何より、他人と比べない姿勢を教えることが大切です。

成長スピードは人それぞれ。「自分は自分」と思える子は、成長の波にも強くなります。

身体の変化は、成長の証。だからこそ、マインドの強さとしなやかさをセットで育てていきましょう。

将来を見据えた指導の在り方

育成は「目先の勝利」ではなく、「未来の可能性」を最大化することが目的です。

PHVという成長の節目を正しく理解し、それを長期的な視点で活かすことが、育成指導者にとっての最大の使命です。

ジュニア年代や中学生の大会での勝利にこだわるあまり、無理なフィジカルトレーニングや出場選手の固定化などが行われてしまうケースもありますが、それでは子どもたちの将来の可能性を狭めてしまいます。

重要なのは、「いま勝てる選手」をつくるのではなく、「将来活躍する選手」を育てること。

そのためには、個々の成長ペースを尊重し、短期的な結果に一喜一憂しない「育成型マインド」を持つことが必要です。

また、子ども自身にも「今うまくいかなくても大丈夫」「いまは成長の途中なんだ」と伝え続けることで、長期的な視点を共有していきましょう。

将来プロになれるかどうかではなく、「サッカーを通じて人間として大きく成長すること」が育成の本質。

その視点を大切にすれば、PHVも決して不安な時期ではなく、大きなチャンスの時期になります。

まとめ:PHVを理解すれば、育成の質が変わる

サッカーの育成年代において、「PHV(ピークハイトベロシティ)」という概念を理解することは、選手の未来を左右するといっても過言ではありません。

身長が急激に伸びるこの時期は、パフォーマンスが不安定になったり、けがが増えたりと、選手本人にとっても周囲にとっても戸惑いの多い時期です。

しかし、それは「危機」ではなく「チャンス」です。

体の変化を前向きに捉え、無理をせず、その成長に合ったトレーニングや生活習慣、心のケアをしていくことができれば、選手はPHVを超えたあと、さらに大きく飛躍することができます。

日本サッカー協会のPHV予測ツールのような科学的なサポートも活用しつつ、指導者・保護者・選手が一体となって成長を支えていくことが、最良の育成環境をつくる鍵です。

成長は「見守るもの」であり、「待つ力」こそが育成には欠かせません。

目先の成績よりも、一人の人間として大きく育つことを信じて、PHVという成長の波に、やさしく寄り添っていきましょう。

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